ぷんブック

読んだ本について書きます

宿敵ラビ・スリア

前期最後ということで、きりよく一部の終わりまで(192ページ)を読みました。


この第4章はラビ・スリアというアナリストとの戦いが描かれています。


「アマゾンは四四半期のうちにキャッシュが底をつくだろう」

スリアに否定的な評価を繰り返し行われたアマゾンは、株価を20%も下落させてしまいました。

ベゾスはマスメディアでAmazonが袋叩きにされても、笑顔でそれに対応し、スリアのレポートはまちがっていると主張しました。彼はこんなときでもありあまるほどの自信と信念に満ち溢れています。


またこのころからジェフィズムという言葉を繰り返し使うようになってきたそうです。「ジェフィズム?しらないカタカナ語だなぁ、どういう意味なんだろう」とすぐにGoogle検索にかけましたが、これは一般的な用語ではなく、これはJeff + ism =Jeffism、ジェフ主義、つまり"Amazon精神"を意味する言葉でした。

家で読みながら思わず「こわっ」と小声で言ってしまいました。


もう一つ「こわっ」と思った単語があります。"ミリラビ"です。

もともとは財務グループの幹部がつくった言葉でベゾスが気に入って使うようになったらしいのですが、「百万ドル以上の計算違い」を表す言葉なのです。

スリアのフルネームは、ラビ・スリアです。百万(ミリオン)とラビ・スリアをつないでミリラビです。


この時期、スリアの分析を会議でよく引き合いに出していたベゾスだそうですが、ほんとうにスリアのことを目の敵にしていたのだなあとよくわかるエピソードばかりです。

強気だからこそビジネスの世界で生き残ったのでしょうが、なんだかちょっと子供の喧嘩みたい、というのと、近くにいたらこまるなぁ、とぼんやり考えながら読んでいました。



ですが発想力に感心するところもとても多いです。

「我々より安く売れるところがあるなら自由にやらせ、彼らがそうできるようにする方法を考えるべきだ」と古本販売として"マーケットプレイス"を始めたり、コストコ創業者ジム・シネガルと出会いそのアイディアを自社に活用したりです。

正直言ってブラック企業

3章の終わり、140ページまでを読みました。

今回はAmazonの倹約・統制・過労がキーワードです。

 

本書ではベゾスが採用基準を絶対に妥協しないことについてたびたび記載されています。そのための取り組みのひとつとして、採用の最後の段階に、面接する責任者「バーレイザー」を必要時に置いています。採用基準を高めてゆくという目的に沿わないとバーレイザーが判断すればその拒否権は絶対的で、他の人はあらがえないのです。

 

もちろん新規採用する人だけでなく、既存の社員に対してはさらにシビアです。Amazonの成長スピードが上がるにつれてもっと働けと発破をかけるベゾスでした。

 

「ジェフは、ワークライフバランスなどうそっぱちだと思っていました。彼が信じたのはワークライフハーモニー。やろうと思えばすべてを一度にできる、とでも言いたいのではないでしょうか」

 

1999年、クリスマスのAmazonのこんなエピソードがあります。

社員たちは家族にひと時の別れを告げ、24時間体制で2週間、手分けしてトイザらスコストコ・ライバル会社の配送無料キャンペーンまで使って在庫を集めまくる「セーブ・ザ・サンタ」作戦をしました。

Amazonはそんな時でも倹約を忘れずに、ホテル1部屋に社員ふたりずつを詰め込みました。それには不満が多く吹き出たようです。

 

 

ここまで読んできて、Amazonははっきりいってブラック企業、と言い切っていいのではと思いました。みんながベゾスほどパワフルなわけではありません。私なら3日で倒れてしまうと思います。

競争心と怠惰というヒトの本質

今回は123ページまでを読みました。


Amazonが導入した本の売上ランキング機能は、著者本人はもちろんのことその配偶者・編集者・出版社などかなり多くの人々を刺激しました。

朝も昼もランキングをずっとチェックする著者に対して、「ついつい(ランキングを)確認したくなる気持ちはわかるが、次の本を書くとか、もっと生産的なことに時間を使ってほしい」とベテラン編集者のジョン・スターリングが眉をひそめるほどだったようです。

やはり、数字というのはパッと見てわかりやすく、人々を競争に駆り立てやすいため、その心理をうまく利用するベゾスはやり手ですね。

また、今ではAmazonで当たり前になった1クリックで購入できるシステムはベゾスの「できるかぎり簡単に買い物ができるようにしたい」という一言からでした。

Amazonはランキング機能による人々の競争心の刺激と1クリックによる手間の軽減から、よりAmazonを唯一無二のものへと確立していったのでした。


ジェフはAmazonを「地球上で最大級の品揃え」にするために、顧客が注文したらすぐ製品を届けようと心を砕きました。

その中で突拍子もないアイディアが生まれたこともあります。

全ての本を2冊ずつ倉庫に置こうとするノアの箱舟プロジェクトだとか、あらゆる商品をひとつずつ物流センターに在庫しようというプロジェクトファーゴなどです。さすがにこれらは社員の同意が得られずに没となったようですが。

「地球上で最大級の品ぞろえ」へ

今回は105ページまでを読み進めました。

 

1998年、Amazonマーケティング担当のマーク・ブライアーがジェフによくない知らせを持ってきました。消費者の大部分は本をめったに買わず、だからAmazonを使っていないし、また将来的に使う見込みもないという内容でした。

憂鬱な話題を聞かされてジェフは落ち込むどころか、ハーバードビジネススクール出身者をあつめて「SWATチーム」をつくり、新たな製品カテゴリーについて調査をさせました。

「とても悪いニュースを持っていったのに、なぜか、それでべゾスは元気になってしまったのです」ブライアーの言葉です。ジェフの人間性を表しているひとことだと思います。

 

調査の結果、拡大のターゲットはまず音楽、次にDVDとなりました。そして、当初掲げており、一時はバーンズ&ノーブルに訴えられもした「地球最大の書店」というミッションは、「地球上で最大級の品ぞろえ」と転換したのです。

 

しかしそんなジェフも成功ばかりではありませんでした。さまざまな事業や企業を買収したり、人を引き抜いたり、数多く手を出し過ぎて、1998年に始まったドットコムバブルがはじける2000年には、その多くがうまくいかない結果となってしまいました。

今まで現実のエピソードとは違うのではないかと疑うほどの快進撃を見せつけられてきたので、おなじ人間だから天才にも失敗があるのだとわかり、少し安堵する気持ちがありました(笑)

他人に流されない強さ

今回は89ページまでを読み進めました。

 

この部分でもやはり、ジェフが自信家であることを示すエピソードが盛りだくさんでした。「我々は月まで行ける」発言はその最たるものでしょう。

Amazonは実在する店舗を持っていませんから、スターバックスのレジ横にAmazon商品を置くという話を検討したことがありました。その際に向こうから要求された「Amazonの株式の10パーセントと取締役ひとり」を飲まず、(ジェフは提供する持ち分をせいぜい1パーセントと考えていた)結局その提携話はご破算になってしまいます。

スターバックスの創業者シュルツの「あなたたちは現実の店舗を持っていないことが伸び悩む原因になるだろう」と発言したのに対しジェフは、「いや、月まででも行けると我々は思っていますよ」と堂々と切り返しました。

 

また、バーンズ&ノーブルとの闘いは興味深いです。米国最大手の書店であるこの会社が、オンライン事業に乗り出すという噂はAmazonをざわつかせました。

提携を持ち掛けられたもののメリットがないため断ると、本格的に対立構造が生まれました。バーンズ&ノーブルがAmazonの打ち出す「地球最大の書店」が虚偽であると連邦裁判所に訴えるようなこともありました。その事件の起きた月末にはバーンズ&ノーブルのウエブサイトが立ち上がり、なんとAmazonを冷やかすレポートまで発表したのです。

Amazon社員はうろたえました。しかし、ジェフはチェーン展開するバーンズ&ノーブルがオンライン事業を本格化するのは難しいと思っていたし、実際にその読みは当たりでした。損失を恐れるために優秀な社員をオンライン事業に投入することをためらったり、小口配送のノウハウがないなど、バーンズ&ノーブルには問題が多発したのです。

 

「他社の心配などするな。他社が我々にお金をもたらしてくれることなど、いずれにしてもないのだから。考えるべきは顧客だ。集中しよう」

ジェフが動揺する社員達に喝を入れるため発した言葉です。

毅然とした態度で冷静に状況を読む姿勢は、頭ではそうしようと思っていてもなかなか行動できるものではありません。そのあたりにジェフの経営者としての強さがにじみ出ているのでしょう。

 

 

超自信家だからできた急成長

今回は70ページまでを読みました。


Amazonが営業を始めてすぐのころ、発注があるたびコンピューターがベルを鳴らし、それをみんなで大喜びしていたそうですが、2〜3週間でうるさいほどのベルが鳴るためにベルを切らざるを得ない状況になったそうです。


正式公開から一週間すると、当時インターネットに接続するとまずその画面が表示される設定にしていたユーザーが多かったサイト、ヤフーから、Amazonを紹介させてほしいと連絡がきました。

そしてAmazonは立ち上げから1ヶ月で販売実績が全米50州と世界45カ国をカバーするほどとなりました。


私が読んでいてとても感心した逸話があります。

Amazonははじめのころ、取次側の「10冊以上の注文しか受け付けない」という条件に困っていました。しかし、ベゾスは機転をきかせてこの問題を解決してしまったのです。

(取次とは、出版社と書店をつなぐ流通業者のことです)


"「抜け道をみつけたんです。取次のシステムで求められていたのは10冊の発注であつまて、10冊送ってもらう必要はありませんでした。苔癬(たいせん)ときう皮膚病の本が目録には載っているけど在庫がないとわかったので、必要な本1冊と苔癬の本9冊を注文するようにしました。そうするお、必要な本と一緒に『注文された苔癬本9冊をお届けできなくて申し訳ありません』という謝罪が届くんです。」"


これらは、ベゾスが持っているカリスマ性や超がつくほどの自信家であるというその特性、そしてまわりからいくら夢物語だ無理だと言われようとも実現できると信じ、それを実際に形にしてしまう行動力があってのことでしょう。

名前は大事

Amazonは最初からAmazonだったわけではありませんでした。はじめ『カダブラ』という社名だったのですが、電話では「カダバー(死骸)」と聞き間違えられることも多く、パッとしないため、変える必要があるとベゾスたちは感じていました。


1994年10月末まではほかに良いものがなく、暫定的にカダブラの名を使い続けていたようですが、そこで「アマゾン」がいいのでは、と気づきます。アルファベットでAからはじまるうえに、世界最大の川であり、世界最大の書店にふさわしい、とベゾスはビビッときました。


Amazonに行き着くまでにrelentless(ずっと続く)という単語を気に入ったらしいですが、情け容赦がないといった意味もあったため、まわりから反対を受けて採用しなかったそうです。

しかしベゾスはrelentlessになにか響くものがあったらしく、1994年9月にはrelentlessでドメインを取得しています。

relentless.comにアクセスするとAmazonのサイトにつながるのはそのためなのです。私はそれを読んで、初めてそのURLでAmazonに飛ぶことを知りました。


名は体を表す、というように、それ自身がまわりから認識されるために不可欠な「名前」は、言語を獲得した私たち人類にとって存在そのものでもあるといえるものでしょう。


今回は52ページまでを読み進めました。